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第44話  

「これは私と夫の結婚指輪です。大した価値はありませんが、特別な意味を持っています。今、この指輪を寄付することで、より多くの人々を助けられたらと思っています」

 この言葉が発せられると、会場はすぐに騒然となった。

 結婚指輪をこうもあっさりと寄付するとは、誰もが予想していなかった。

 篠田初の行動に対して称賛の声が上がり、彼女の私情に拘らなくて大いなる愛が評価されたが、一方で彼女の結婚生活に問題があるのではないかと噂する人もいた。

 松山昌平は観客席の中央に座り、冷徹な雰囲気を漂わせていた。彼の整った顔には一切の感情が表れていなかった。

 白川景雄はニヤニヤしながら、松山昌平に向けて鋭い言葉を投げかけた。「うわぁ、以前はこの指輪を大切にしていた初姉さんが、今や簡単に寄付してしまうなんて。松山さんに対する失望感が相当なものだったんだろうね。もう手放すつもりね、おめでたい話だよ!」

 白川景雄はその後、立ち上がり、台上の篠田初に向かって口笛を吹いた。

 「姉御、ご安心ください。今日は白川家の半分の財産を投げ打っても、このダイヤモンドリングを買い戻します!」

 白川景雄の大胆な告白によって、まるで爆弾が炸裂したかのように、その場は再び大騒ぎに陥った。

 普段は品行方正な松山さんの妻が、白川家のプレイボーイと、何かしらの関係があったのだろうか?

 篠田初は、白川景雄に対して心からの感謝の気持ちを込めた心の形を示した。

 彼女の子分が、今日彼女に大きな助けとなってくれたことに感謝していた。

 司会者は篠田初に再び尋ねた。「奥様、ダイヤモンドリングには特別な意味があります。本当に寄付する決断をされたのですか」

 篠田初は大きなダイヤモンドリングをじっと見つめ、少しの間沈黙した。

 彼女の心には、結婚生活の四年間の出来事が次々に浮かび上がってきた。かつてはこの指輪を非常に大切にしていて、入浴や食事、睡眠時でさえも外すことはなかった。それは松山昌平との結婚を大切にする気持ちと同じだった。

 しかし、代わりに得られたのは、みじめな状況だけだった。

 今や、指輪を外した瞬間に初めて分かった。この一見華やかで輝かしい物が、彼女に与えていたのは愛や希望ではなく、束縛と枷だった。

 断捨離は人生において学ぶべき重要な課題だった。

 だから、篠田初、もう手放す
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